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日本人はLCCに過大な期待をしている [航空]

茨城空港の春秋航空就航問題しかり、とにかく日本人(というよりFOXNEWS的に言えば主流メディアだが)はLCCに過大な期待をしすぎだと思う。巨大な発着容量を持つ空港を整備してLCCを集めればハブ空港になるかのようである。
だが世の中には低価格より大事なものもある。時間価値や機会費用だ。

確かにシンガポールや仁川、アムステルダムなどはLCCを集めて、勢力著しいものがある。が、大韓航空、アシアナやシンガポール航空、KLMオランダ航空が、世界きってのサービス(シンガポール航空はさることながら、韓国二社も欧米での評価は高い)を提供しているおかげで、ハブ空港となっているのであって、LCCの勢力伸張は発着能力の余裕を活用した副次的なものである。LCCばかりではハブ空港にはなれない。
ライアンエアの拠点のスペインのジローナ空港(バルセロナから100キロほど北東)やローマのチャンピーノ空港はバルセロナ空港やローマのフィウミチーノ空港の敵ではないし、ハブ空港とは呼ばれない。航空当局にとっては、大手のエコノミー運賃を下げるためのかませ犬としての役割を期待されているにすぎない。

LCCが短距離で大手に完全にとって変われない要因はいくつかある。
前提として長距離路線の事例を触れる
前にもふれたことがあるが、長距離では大手は単価の高いビジネスクラスや貨物輸送の利益をエコノミーの運賃に引き下げに回せるので、LCCよりかえって有利である。また長距離路線に必須な大型機は高価であり、操縦士の養成費用も高く、737やA320クラスのように安い人件費で雇用することもできない。

短距離路線で第一に、LCCが大手にとって変われない理由は、定時性や異常時(降雪などの異常気象など)の地上対応を大手より優先していないので(ライアンエアに比べれば、イージージェットやジェットブルーのクラスは信頼に値するが)、時間価値の高いビジネス需要を取り込むことができないことにある。
第二は搭乗率に対する考え方の差である。大手はビジネス路線では需要に比して多い輸送力や便数を確保して、飛び乗りの需要に対応しようとする。日本の国内線で大手二社はだいたい羽田路線で60%から70%の搭乗率を適正とみている。これを超えると、いざという時に満席でとりこぼす需要が出てくる。それに対してLCCは搭乗率が100%に近付くことを理想としている。これでは飛び乗りのビジネスマンは安心して乗れない。
アメリカの国内線の場合はやや状況が異なる。大手はハブ空港のシステムを完成しているので、ある路線が混んでいても、やや遠回りなルートをとることで解決する。たとえばデルタ航空でニューヨークからロサンゼルスへの直行便が一杯でも、アトランタやデトロイト、ソルトレイクシティー経由なら大丈夫である。だから搭乗率が80%以上でも問題ない)
昔の国鉄は主要な特急の乗車率が100%に近付くことを理想としたが、それは他交通機関との対抗や乗客の利便性を考慮しない親方日の丸の発想である。いまとるべきではない。

とはいえ、実際には欧州ではLCCの勢力が路線単位で拡大しているのは事実である。ビジネス以外のオフでは欧米人のケチぶり(収入の多寡はあまり問題ない)は日本人からすると大変なものなので、安い便しか利用しようとはしない。
大手航空会社が50人クラスの機材で飛ばす路線をLCCが同等の便数で737クラスを飛ばしていることも、首都クラス未満の都市行きではよくあることである。大手に乗る人は決して人数比で多くはない。それが日本と違うところだ。スカイマークが輸送量で大手に勝っている路線はない(JAL撤退後の神戸~那覇などは微妙だが、スカイマークの機材が小さい)。
イギリスの地方都市発と大陸の地方都市、地中海のリゾート地を結ぶ路線はLCCの独占だったりする。が、そういう路線は毎日運行ではないので、輸送力はたいしたことがない。

だが欧米と日本の休暇のスタイルは違う。欧米では休暇を従業員が指定できない(だからお盆休みや正月休みのような帰省ラッシュは生じない)代わりに、休暇が数週間と長い。だからイギリス人がせっかくの地中海のバカンス地行きのLCCの飛行機が一日くらい遅れても気にしないが、日本人の短い休みでは死活問題である。帰省シーズンが大雪や台風にかぶるとマスコミのニュースも悲惨な感じで報道する。正月の帰省で大手がまともに飛んでいる時に、スカイマークだけ遅れて帰省できなかった家族は親戚の笑い物だろう。
この点、中国は休みの長さや交代制などが欧米の社会に近い。人民公社の運営など、ソ連や東欧諸国というモデルを介して欧州の社会システムに直接に影響された度合いが日本の比ではないからだ。
フィリピンやマレーシアも欧米の影響は日本の比ではないからLCCが普及する。
所得格差も大きいし、金への執着心は並みではない。だから春秋航空など、日本よりLCCが受容されやすい土壌がある(TVなどの報道を見る限り、あまり春秋航空は欧州のLCCを直接モデルにして経営しているわけではないようだ。合理的な経営を貫いた末の欧州との一致だろう)。

日本人の生活サイクルが変わらない限り、LCCの普及には限界があると思う。


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